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【CPM入門(2)】クリティカルパス法を実践してみる!



クリティカルパス法(Critical Path Method)は、複数の関係者が混在するプロジェクトで、「プロジェクト全体の完成日が決まっている」場合に、「最も日数のかかる作業経路を見つけ出すこと」です。


会社で仕事をする場合に、「全てが大事」「何でもが急ぎ」となりがちですが、実はプロジェクトには、

  • 絶対に遅れてはいけない作業経路

  • 多少遅れても全体の完成日には影響しない作業経路


が混在しています。この違いを認識しないと、毎日の努力が無駄になり、完成日が遅れることになります。


また、このロジックを学ぶことにより、数か月先に起こり得る「遅れ」を予見することも可能になり、早期の段階でその「遅れ」を回避する対応策(contingency plan)を準備できる力がつきます。


でも、プロジェクト管理に直接かかわっていない方は、そろそろ、「うわっ、面倒くさそう、もういいわ!」って思われるかもしれません。そこで、もっとわかりやすい簡単なプロジェクトを例に説明しましょう!



結婚式準備プロジェクトで学ぶ「クリティカルパス法」


結婚式は以下のポイントでCPMの本質を説明するのに最適な題材です。


  • 誰もがイメージできる

  • 複数の業者が関わる

  • 並行作業が多い

  • 失敗が許されない



①   タスクを特定する

プロジェクトの必要な一つ一つの作業をタスク(task)と呼びます。


  • まず、思いつく限りの「タスク名」と「作業にかかる予想日数」を、それぞれ付箋(Post it)に書いて、ホワイトボードにランダムに貼り付けてください。例えば、結婚式の準備に必要なタスクとして、以下のA~Hが挙がった場合、ホワイトボードを見ながらタスクを表にまとめます。そして、表に各タスクの所要日数と依存関係を書き込みます。


  • 依存関係(dependency)とは、どのタスクを先に終了しないと次のタスクを開始できないというロジックです。この例では、「タスクD:衣装のサイズ合わせはタスクB:ドレスの製作が終わらないとできない」となります。

ID

タスク名

タスク内容

所要 日数

依存関係 (前工程)

A

式場予約・式の計画

日程確定、業者手配

2

 

B

ウェディングドレス製作

デザイン選定、採寸、縫製

14

A

C

招待状作成、発送

招待客リスト作成、印刷

5

A

D

衣装サイズ合わせ

サイズ調整

3

B

E

会場装飾準備

花、装飾品製作

7

A

F

料理メニュー決定

試食、最終確定

4

A

G

会場設営、リハーサル

全体リハーサル

2

C, E

H

結婚式本番

挙式、披露宴

1

G, F


  • これらの依存関係を見ながら、各タスクを矢印で結び、ボックスの上に所要日数を入れて以下のようにダイアグラムを作成します。


  • 次に矢印でつないだタスクの各経路の総作業日数を算出します。

①   A→B→D→G→H    2+14+3+2+1=22日

②   A→C→G→H         2+5+2+1=10日

③   A→E→G→H        2+7+2+1=12日

④   A→F→H           2+4+1=7日


この4つの経路(Path)のうち、最長経路の①A→B→D→G→H=22日がクリティカルパスで、この経路にあるタスクのどれか一つでも遅れると、予約した日に結婚式を挙げられなくなります。つまり、B「ドレス製作」、D「衣装サイズ合わせ」、G「会場設営、リハーサル」のどれが遅れてもこのプロジェクトは遅れることになります。


一方、C「招待状」、E「装飾準備」、F「料理決定」は、ある一定の日数までは遅れても、式の実行日には影響がありません。


 

クリティカルパス法を使わないと……


例えば今週、クリティカルパス上にあるタスクが1日遅れた場合に、ずっと先のプロジェクト完成日も1日遅れてしまうことが、今日の時点ではわからないのです。


すなわち、各タスクにたった1日の遅れがあっても、全体完成日が達成できない「危機的な経路」クリティカルパスです。プロジェクトマネージャーは、このクリティカルパス上にある各タスクをいかに遅れなく進めるかが手腕の見せ所なのです。


さて、結婚式のクリティカルパスを、前回のブログでお話ししたテーマパークの建築工事に戻してみましょう。


テーマパークの建物はオフィスビルと異なり、建物の中をジェットコースターなどのライド車両が走る、または、巨大な造作物を建物に入れる場合が多いです。しかし、建物を施工するゼネコン、サブコンは日本の会社で常に現場で工事をする、でも、ジェットコースターを製作するベンダーは、アメリカの工場で車両を製作する、また、コースターのレール構造物を製作するベンダーは中国にいる。こういう複雑な構成が多国籍プロジェクトでは頻繁におこります。


ここで、全工事関係者が共有できるスケジュールを一元管理するシステムがないと、海外のベンダーは日本の現場の状況をリアルタイムで把握できずに、単独で責任範囲(scope)内の製作のみを元の予定で進めてしまいます。


先ほどの結婚式の依存関係では、その危機感があまり伝わりませんので、テーマパーク建設に戻って、タスクの依存関係のロジックを簡単に解説しましょう。


例えば、ジェットコースターの車両の製作に6か月、アメリカから日本への輸送も船便で2か月かかるとします。同様にレール製作と輸送も中国で同時進行します。一方日本の建設現場では、ゼネコンによる基礎工事が始まり、躯体工事、鉄骨建方と、工事がどんどん順調に進んでいきます。


まず、ここで「レール構造物の製作」「現場据え付け」のタスクと「外壁工事」のタスクの依存関係、「コースター車両製作」「車両据え付け」と「屋根工事」の依存関係を把握します。


「レール構造物」は巨大で、建物の扉から入れられるような大きさではないため、レールが搬入されるまでは、建物側面の外壁の一つを搬入開口部として開けておかないといけません。同様に、ジェットコースター車両は、壁からではなく、上からクレーンで吊って建物の中に入れるため、屋根を閉じる工事もコースターを入れた後でないとできません。これらの2つのタスクの依存関係は、F-S(Finish-to-Start)です。つまりAが終わらないとBを始められないというロジックで繋ぎます。


後工程(successor task) の「外壁を閉じる」というタスクは前工程(predecessor task) の「レール搬入据付」のタスクが終わらないと開始できないというロジックを、プロジェクト管理用のシステム上で設定します。「コースター搬入」と「屋根を閉じる工事」も同様です。

(タスク間の依存関係ロジックの作り方と、つなぎ方は次回のブログで実務詳細として図解します。)


「そんな事、言われなくてもわかるでしょう!」と思われるかもしれません! 


いやいや、多国籍プロジェクトの海外ベンダーの皆さんは、ご自分たちの過去のネガティブな経験から、現場のゼネコンの工事が常に遅れることに慣れているため、「まあ、ひと月ぐらいは、当然遅れるだろう」とタカをくくっていることが多く、これが致命傷になるのです。CPM管理をしていないプロジェクトでは、ジェットコースターの製作が少々遅れても、外国のベンダーには危機感さえなく、その遅れも自主的に報告しないことが多いですね。


私が経験したテーマパーク建設プロジェクトでは、毎週のスケジュール会議で全ベンダーのタスクの完成率と日数を精査して、タスク完了日に遅れが出ないかをスケジューラーが必ずチェックしていました。また、クリティカルパス上にあるタスクが遅れそうな場合は緊急会議を行い、対策を即時提案、決定していました。


実は、過去のアメリカのテーマパークプロジェクトで、予定開園日を遵守できた工事は一つもないことから、日本企業の緻密な管理になじみのないベンダーは、「どうせ遅れるさ!」と思っていたのです。ご存じの通り、日本のゼネコンは遅れるどころか、予定より早く現場が進む事もあります。スケジュール会議で進捗度合をアップデートすると、唖然として、慌てる海外ベンダーもいました。


こうして、現場のゼネコンが、外壁を閉じる日、屋根を閉じる日などを遅らせることなく、スムーズにシンクロさせる技術がクリティカルパス法なのです。



次回は、タスクのフローチャート作成から、依存関係の種別分け、そして各タスクの余裕日数の求め方を図解します。



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