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「あ~、え~」のない聞きやすい訳出 ―― 通訳力を一段引き上げる”即効トレーニング“


あなたは、ご自分の訳出が聞きやすいかどうか?を意識したことがありますか?


語彙力、理解力、専門知識―――通訳者に必要な能力はいくつもありますが、実は、もっと短期間で効果が出る改善ポイントがあります。

それが、「フィラーをなくす」ことです。



① フィラーをなくす ―― これだけで印象は激変する


通訳者にとってのフィラー(filler)とは 、「え~」「あの~」「その~」、英語なら well, um, you know などの、意味を持たないつなぎ言葉のことです。


かつて、通訳者の数が限られていた時代には、CNNニュースや日米首脳会談など、最前線で活躍されていた方々の訳出にも、フィラーが多用されるケースが珍しくありませんでした。


「え~あ~、日米ぃ~安全保障体制のぉ~、いわゆるぅ~戦略的ぃ~関係ぃ構築ぅ~を~ぇ~、両国共同でぇ~ですねぇ……」


このような「間延びした訳出」を聞かされると、内容が入ってこないだけでなく、「聞こう」という意欲そのものが削がれてしまいます。

 


フィラーは「自信のなさ」として伝わる


心理学的にも、フィラーが頻発すると、話し手は「自信なさそう」「誠意に欠ける」という印象を与えます。その結果、聞き手の中に、「この通訳、本当に正確なのだろうか?」という疑念が生まれ、無意識に批判的な姿勢になってしまうのです。


どれほど努力していても、これでは正当な評価を得ることができません。

 


政治家の話し方に学ぶ「フィラーの影響」


現在、高い評価を受けている政治家の演説や記者会見には、共通点があります。

それは、フィラーが極端に少なく、話の構成が明快であること。


論点が整理され、起承転結がはっきりしているため、「わかりやすい」「スッと入ってくる」と感じるのです。


一方で、過去の多くの政治家の答弁は、「え~、その~、ですね~、すなわち~……」というフィラーだらけの“逃げの答弁”が目立ち、国民の関心を失ってきました。


興味深いのは、原稿を読む場面ほどフィラーが増え、自分の言葉で語る場面ほどフィラーが消えるという点です。


つまり、「理解して話しているかどうか」が、そのまま話し方に現れるのです。

これは、通訳にも完全に当てはまります。

 


フィラーをなくすと、訳出はこう変わる


フィラーが消えると、

  • 話のリズムが整う

  • 内容が頭に入りやすくなる

  • 通訳者への信頼感が高まる


結果として、聞き手は自然とあなたの訳出に引き込まれていきます

これこそ、通訳者が目指すべき理想の「訳出スタイル」です。

 


フィラーを多発してしまう3つの原因


フィラーは無意識の癖として出てしまいます。その主な原因は次の3つです。

  1. 適訳を探す時間稼ぎ → 沈黙が怖くて、つい口が動いてしまう

  2. 長い熟語・言い慣れない表現の直前 → 噛むことを恐れて構えてしまう

  3. 文末処理の甘さ → 話が終わっても口が開いたまま、無意識に発声

 


フィラーを消すための即効トレーニング4選


すぐに効果が出る方法を、いくつかご紹介します。


1. 瞬間的な沈黙を恐れない

わからない時は、一瞬、黙る勇気を持ちましょう。フィラーを入れるより、沈黙の方がはるかにプロフェッショナルです。


2. 30秒トーク練習

日常会話から、自分の考えを30秒以内にまとめる練習を。考え込まず、フィラーを使わず、即答をする癖をつけましょう。


3. 言い換えストック

「はい」「それでは」「まず」「次に」など、文頭表現をストックし、フィラーの代わりに使う。


4. 鏡を見て話すトレーニング

鏡を見て口角を上げて話す。人は、笑顔の表情でフィラーを発声しにくいのです。


 

② 無駄な表現・繰り返しを削り、訳出を引き締める


フィラーと同時に意識したいのが、冗長表現の削減です。


  • 「~と思います」→  "I think" がなければ、不要

  • 「~それでですね」「~なんですよね」→ 「です・ます」で十分

  • 「~とか」「というような」→ 全て削除。

  • 「そして、--- そして、---そして、」→”and”で次々に繋がれた英語には、「さらに」「加えて」などと複数の表現を使い分けるだけで、訳出は驚くほど締まります。

 


③形容詞・副詞の単調さから脱却する


英語の great / wonderful / awesome / fantastic をすべて「素晴らしい」と訳していませんか?

英語

日本語例

Great

すごい・見事だ

Wonderful

素晴らしい・感動的

Awesome

圧巻だ・すてきだ

Fantastic

最高だ・卓越した

日本語の語彙を増すだけで、訳出は一気に洗練されます。

 

最後に:理想の訳出を“耳で学ぶ”

以下は、2024年の米大統領選ディベート(トランプ vs. ハリス) の同時通訳動画です。https://www.youtube.com/watch?v=BP-TQWQY3JY&t=1455s

※全体で約2時間半の動画ですが、リンクをクリックすると、特に聞いていただきたい24分15秒頃から再生されます。

訳出は、

  • フィラーが少ない

  • リズムが良い

  • 接続詞の使い方が絶妙

  • 日本語として自然


まさに理想形です。

 


まとめ


フィラーをなくし、無駄な表現を削り、語彙を磨く。


この3点を意識するだけで、あなたの訳出は劇的に変わります。ぜひ、この動画を教材にしながら、「聞きやすい通訳」を自分のものにしてください。


あなたの訳出が、どう進化するか――楽しみですね



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