実はとても遠回しなアメリカ人たちの「No」の言い方
- エディ先生
- 7月25日
- 読了時間: 6分
今回は、通訳技術ではなく、アメリカ文化の違いの一例をご紹介します。「アメリカ人はストレートだ!」と思っている方、是非一読ください!

皆さんが英語を学び始めた頃、こんな定番の「会話例文」を教えてもらいませんでしたか?
"Would you like some more coffee?"(コーヒー、もう少しいかがですか?)
"No, thank you."(いえ、結構です)
私も同じく、「丁寧に断るときは "No, thank you" で大丈夫」と教わっていたので、アメリカに来たばかりの頃は、これを自信満々に使っていました。
でも、しばらくすると、こんな小さな違和感が生まれてきたのです。
「あれ?…誰も "No, thank you" って言ってないぞ?」
そうなんです。現地で暮らしてみて初めて気づいたのですが、アメリカ人、とくにレストランの店員さんや初対面の人に対しては、「No」とはっきり断る代わりに、とてもやんわりと、相手の気遣いをねぎらうような言い回しをしているんです。
たとえばコーヒーのおかわりを聞かれたとき、アメリカ人はこんなふうに言います:
"I'm good for now, thanks for asking."(今は大丈夫です。聞いてくれてありがとう)
えっ!? 日本の英会話の教えと違うじゃないですか!
「アメリカではNoはハッキリ言わないとダメ」
「遠慮していると、責任を押しつけられる」
そんなふうに言われていたのに、現実は真逆でした。
“No”をストレートに言わないアメリカ文化
文化の違いって面白いもので、日本語なら「結構です。ありがとう」くらいは失礼ではありません。でも英語圏では「断るときこそ、ちょっとした思いやりを」っていうのが暗黙のマナーになっています。特に初対面の相手、サービスを提供する側の人に対しては、社交辞令的な対応が多い文化です。ビジネスでも、職位が高い人ほど、相手に気を使ったやわらかなお断りをします。つまり、ストレートに”No”を言うのは礼儀を欠くことがあります。
たとえば、アメリカのレストランで、メインを食べ終わって満腹状態のとき。サーバーが笑顔でこう来ます:
"Hi folks! We have a special dessert menu for you — chocolate cake with vanilla ice cream, home-made cheesecake…"(皆さん、では特製デザートメニューをご紹介しますね〜 バニラアイス付チョコレートケーキ、自家製チーズケーキ…)
この時、日本人はつい、長~いデザートの説明を最後まで聞かずに、
"No, thanks. I'm too full."(いえ結構、もうお腹いっぱいです)
と、やや冷たく即答してしまいがち。でもアメリカ人の場合は、こう返すことが多いです:
"Wow, they all sound amazing. As I fully enjoyed such a delicious steak dinner tonight, I’ll try them some other time — But I appreciate the offer, thanks a lot!"
まず「うわ~美味しそうですね!」と褒める。
次に「でも今日はステーキを本当においしくいただいてので、また次回試してみますね」と笑顔でソフトに断る。
最後に「おすすめしてくれてありがとう」と感謝の言葉で締める。
ここまで長く話して、やっと丁寧な”No”になるわけです。
ワインのオーダーは“アメリカ的社交辞令力”の見せどころ
さらに難易度が上がるのが、ワインを選ぶ場面。
けちな私は、高めの美味しいワインはTotal Wine & More(ヒューストンのワイン専門チェーン店)で格安で購入し自宅でゆっくり楽しむ派なので、外食では、誕生日や結婚記念日などスペシャルな日でなければ、安価なボトルですませます。
そうは言っても、ちょっとおしゃれなレストランで、安いワインを堂々と頼むのは、誰でも勇気が要りますよね。
以前、業界の方に聞いた話ですが、実は「メニューの価格が、下から2番目に安い」ワインこそ、店のマージンを最も高く取ってあることが多いらしいのです。つまり、多くの人が “最安価を頼むのはちょっと恥ずかしい…” と避ける心理を読んで、店側は、多くの客が頼みそうなその少し上の価格帯、そこに最も大きな利益を上乗せする傾向があるとの事。最安価でリストしているワインは、「うちは安いワインもあるよ!」というポーズで、誰もオーダーしない前提で安くしてあるので、お得だそうです。実は、その一つ上の2番目の価格のものより上等なことが多いのです。私の経験では、今まで最安値のワインがおいしくなかったことは少ないです。
だからこそ、私は、最安のボトル($40程度)を自信を持って選ぶようにしています。とは言っても、「ワインリストを下さい」とお願いすると、サーバーは、「待ってました!」 とばかりに、ニコニコしながら、なかなか、断りにくい中間価格($80~$90)のボトルをお勧めされてしまうのが世の常… それを断る勇気ある?
"Silver Oak Cabernet is one of the most popular reds — it’s bold, smooth, and pairs beautifully with our rib eye steak. Would you like to try that one?"
(シルバーオーク・キャベルネ・ソービニヨンは当店で大人気で、しっかりとした味わいで当店のリブアイ・ステーキにぴったりです。いかがですか?)
ほら~来た!どうする?
そんな時、こんなふうにやんわり断ってみたら?
"Wow, sounds tempting! Thanks for your recommendation! We’ll probably go with something a bit more casual and simpler tonight — maybe this Astrada Pinot Noir from Chile."
(わ~とても素敵ですね。お勧めありがとうございます!でも今夜はもう少しカジュアルでシンプルなものにしたいので、このチリ産のアストラダ・ピノ・ノワールでお願いしようかな!)
私の経験では、こんな風に丁寧に返せば、サーバーも、気を悪くせず、それ以上プッシュせずに丁寧なサービスを続けてくれます。やはり、スマートな社交辞令で、「さらり」とかわすのがアメリカ文化ですね。
アメリカ式 “Noの言い方”の3ステップ
ポジティブな表現で褒める("Sounds great!" “Awesome!”など、ちょっと大げさでもOK!)
やんわりとお断りする("I’ll try them some other time"などを添えて)
笑顔とリスペクトで相手の気遣いに感謝する("Thanks for asking", "Appreciate your recommendation")
どうですか、アメリカ人がストレートなのは、身内や親しい間柄だけ。距離の離れた相手ほど、「社交辞令」を使うのですね。このアメリカ式の「やんわりの"No"」は、会議の中でも、断りにくい提案に対するコメントなどで頻繁に飛び出しますので、通訳のあらゆる場面で、状況把握に役立ちます。
通訳者の皆さんも、元の日本語が丁寧なのに、あなたの「日→英の訳出」がストレートすぎて、英語を聞いている相手に不快に映らないかどうかは、いつも気を使ってくださいね!
by エディ先生
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タフなネゴシエーターは、NO→But だそうです。
スマートなお断りは、Gleat→But→Thanks ということですね。