数字の英語⇔日本語変換についていけない!
- エディ先生
- 4 日前
- 読了時間: 6分

数字の訳出は、逐次でもそうですか、特にIR(Investor Relations=企業が投資家に向けて経営状況、財務状況に関する情報を発信するイベント)の同時通訳では、汗タラタラの試練ですよね!
日本語の数字が、英語の様に3桁ごとに区切られないから、通訳者に大きな負荷がかかる!それはなぜ?
日本語は、漢字文化圏にあり、中国の「万進法=4桁区切り ten thousand-based numbering system」が基本ですが、英語圏では「千進法=3桁区切り thousand-based numbering system」を使っているからなんです。
ですから、日本語は「万」から始まる4桁ごとに、万→億→兆で区切られます。兆は10の12乗で、そこで初めて3桁と4桁の最小公倍数の12が一致するため、「兆」と”trillion”の桁が合致するんですね。
数字と仲良しになるには
皆さんは、通訳をする際に数字を「機械的な暗号」として、距離をおいていませんか? 私のお勧めは、数字を「固有名詞」としてとらえて、「使われる状況と紐付け」して暗記することです。
変換困難な桁数として、まずは、10万の単位の6桁の数字、$535,000 (five hundred thirty five thousand dollars、53万5千ドル)を例に考えてみましょう。このような6桁が頻出するトピックって、どんな分野でしょうか?
例えば、アメリカの住宅価格(2025年の戸建て住宅の中間値 median price は$394,250)、そして米企業の人事会議で出てきそうな、米企業の中堅管理職の給与も6桁($100K~200K)。30年前は、基本給が6桁の10万ドルを超えることが、アメリカのサラリーマンのステータスでした("He is making 6 digits!" 彼って10万ドル以上稼いでいるよ!)……でも今ではインフレで、大学院卒でも初任給が6桁の方もいますからねぇ。
次に難しいのが9桁、$700,000,000(seven hundred million dollars、7億ドル)など、そして、12桁$250,000,000,000(two hundred fifty billion dollars、2千5百億ドル)など。
このあたりの9桁が使われるのは、企業の売上、営業利益などの金額、日米両国の総人口(日本:126M(1億2千6百万人)、アメリカ:342M(3億4千2百万人))などですね。個人収入の例外では、大谷翔平さんの10年契約の総額が$700M(7億ドル)です。12桁となると、もはや国家予算レベルですね。
この3桁ごとに言い方が変わる訳出をスムーズにするには、担当している企業の、毎年の業績を暗記してしまうことがベストです。売上、営業利益、営業利益率など基本的な数字の桁数を頭の中に、「数字」ではなく「語彙」として覚える、それは、その企業の製品名などと同じ要領で覚えれば良いのです。
問題は桁数の大きさだけではない
他にも通訳者の悩みは、訳出に直接関係はないのですが、「理解=comprehension」上のいつも困る数字。聞いた瞬間に、日本で使用する単位ではそのサイズ感が想像できないものでしょうか。つまり、計測単位の1/4、1/8という英語独特の、日本に無い概念をどのように身に着けるかですね。
「25円硬貨がない日本人」が、最も理解に苦しむのが 1/4(quarter)の分割単位です!
何故、英語には1/4、1/8、1/16のような単位があるのかというと、それは、元々の英国のImperial System(ヤード・ポンド法)が4、8、16(4の倍数)で割ると、その一つ下の単位を表していたからです。例えば、1ガロン(gallon)=4クォート(quart)= 8パイント(pint)、1ポンド(pound)=16オンス(ounce)という具合に。
料理のレシピでも、1/2カップとか大さじ1/4などの言い方は、見た目でおおよその量を表す欧米文化から来ているともいわれています。0.25カップと言ってしまうと、英語話者などには、見た目の分量がわからなくなるからですね。
そして、通訳さんたちが、建築、製造の世界で最も悩まされるのが、長さ、重さ、容量の単位の違いですね!
本来なら、単位の換算は、通訳の責任ではありませんので、カタカナでxxインチ、○○オンスで訳出しても良いのですが、とは言っても、現場通訳で、職人さんたちに、「それって何ミリ?」と聞かれて、「わかりません」とは言えないですよね。でも、これをメートル法で生きてきた日本在住の通訳さんたちに、「肌で感じろ!」というのはムリです。それでも、ヤード・ポンド法と分数表示に慣れる方法は?
結論です!1/4や1/8で表す「モノ」は、かなり限られている!
つまり1/4や1/8で数える 「モノ」を固有名詞として暗記してしまえ!という事!
重さ:1/4lb (poundポンド)=113g これはマクドナルドのクォーターパウンダーを食べて、その肉の重さをイメージすれば、「おおよそあの程度か」と感じられますよね。
ややこしいのはステーキのオーダーです。ステーキハウスでは、oz(ounceオンス)で表示されます。1ポンド(454g)=16オンスです。ステーキのサイズはメニューでは、8oz(227g) と12 oz(340g)のチョイスが多く、アメリカ人は結構12 ozを選びます。日本人の場合は、サラダ、パン、前菜が来る事を考慮すると8 ozがおすすめ、と覚えておくと良いですね。
液体の量:飲み物も、種類によって量を異なる単位で呼ぶのが面倒です。ビールはヨーロッパで昔から1パイントのグラスにタップから注ぐのが普通だったので、アメリカに渡ってもパイントで提供します。1 pint(パイント)は473 mlで日本のロング缶サイズです。一方グラスワインは4 oz(118 ml)か6 oz(177 ml)でオーダーします。ワインは1本25 oz(750 ml)なので5 oz(148 ml)ずつ注げば1本5杯の計算でサーブしています。
パイントは1quart(クォート、0.946L)の1/2。クォートは車のエンジンオイルの缶の大きさです。1gallon(ガロン)=3.8リットルは、アメリカのスーパーで売っている一番大きいミルクの容器です。
(注)液体のoz(オンス)はfluid ounceと言って、重さではなく液体容量の単位です。

長さ:inch(インチ)は、工具類、ねじ類で使うので、それぞれ、1/2インチ(1.27cm)、1/4インチ(0.635cm)、1/8インチ(0.3175cm)、1/16インチ(0.159cm)まで使います。工事現場でずっと働いて、ねじ類を毎日見ていないと実感を持てないでしょうね。特にこの「インチ」だけはさらにややこしく、工事などでは3/8 インチ、5/16インチと微妙に計算しにくい分数が使われるので、本当に注意です! イメージとしては3/8は半分よりちょっと短い、5/16は1/4よりちょっと長いという程度で覚えるしかないですね。以下2インチまでのcmとinchの相関関係を視覚的に覚えておくと良いでしょう。

不思議なことにfeet(フィート)は分数で呼びません。例外だらけですが、背の高さだけは、5’10”(5フィート10インチ、177.8 cm)のように少数や分数を使わないため、アプリでも即計算できません。インチに一度直してからセンチに換算しなければならないので、通訳中に頭の中で計算するのでは間に合いません。背の高さだけは、150㎝~180㎝ぐらいまででありそうな数字も暗記しないといけないですね。
距離: 1/2 mile(マイル)、1/4 mileの2つは、陸上、マラソンなどのレースで使います。陸上競技の「語彙」として、フルマラソンは26.2マイルと覚える。マイルリレー(mile relay)は1600Mつまり、4x400mリレーです。
面積:建物の面積はsquare feet(sq ft、平方フィート)で、平米の約10分の1(1 sq ft = 0.09㎡)です。例えば、レストランの面積が3,000 sq ftなら 278平米です。
温度:摂氏と華氏の変換式は℃=(℉-32)×5/9、℉=℃x9/5+32ですが、通訳しながら計算している時間はありませんし、立ち話であってもアプリを開けない場合があります。これも主要な温度を覚えておくことです。冬の気温は0℃=32℉、5℃=41℉、夏の気温は25℃=77℉、30℃=86℉、人間の平熱は37℃=99℉、病気で危険な熱はレベル40℃=104℉など。
どうですか?面倒な「数字」が個々の顔に見えてきましたか? 数字の変換が苦手な方、裏技で、語彙として暗記してみてくださいね!
by エディ先生
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今回は、プロ中のプロを目指す本格的通訳のかたの矜持を垣間見ることができました。
日本人であっても3桁区切りの数字を4桁区切りで読むのに時々戸惑います。
まして重さ・嵩・面積は、なかなか生活実感のない単位となっています。