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【今日はちょっとひと息】MLB用語を楽しく解説!




ついにMLBもポストシーズン。ゲームを英語音声で聞いてみませんか?


もし、BSチャネル、有料TVなどで英語音声が選べるのであれば、ぜひ一度MLBのゲームを生の英語で視聴してみませんか!

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■ 大谷さんは、 “Two-way player”!


MLBレギュラーシーズンは、スーパースター・「二刀流」 two-way player の大谷翔平選手の55号ホームランで9月28日に終わりました。後半戦、投手としての素晴らしい成績を考えると、3年連続MVPの可能性が大きいですね。


大谷さんは、”Unicorn”とも呼ばれています。ユニコーン(一角獣)は「実在しない架空の動物」で、過去の有名選手に使われていたLegend「伝説」を超える表現であり、大谷さんは、この世に実在しない、他の惑星から来たという評価です。また、実況アナウンサーたちは、彼を“One of a Kind”(唯一無二)とか、“GOAT”とも呼びます。GOATは Greatest Of All Times” の略で、史上最高の(選手)という意味です。


■Post Season(プレーオフ)出場の条件


現地時間9月30日から、ワイルドカードゲームが始まります。ポストシーズンの仕組みはNPB(日本のプロ野球)と異なります。MLBにはアメリカンリーグとナショナルリーグを合わせて30球団があり、それぞれEast、Central、Westの3地区ずつ、合計6地区に分かれています。


ポストシーズンに進めるのは両リーグ合わせて12チーム。まず各リーグの3地区で優勝した6チームが自動的に出場権を得ます(このことを “Clinch” と言います。例:”Dodgers clinched the playoff berth.”)。さらに各リーグでワイルドカード枠として3チームずつ、合計6チームが加わります。ワイルドカードとは、もともとトランプのジョーカーのように「例外的に出場できる権利」を指し、スポーツでは予選敗退チームの中から特例で出場できる枠を意味します。条件は、地区優勝を逃したチームのうち勝率が上位3位までに入ること(同率の場合は直接対戦成績が上のチームが進出)。


MLBはアメリカンリーグとナショナルリーグの交流戦が多く、また地区ごとの実力差も大きいため、ある地区の3位が別の地区の2位より勝率が高いこともあります。そのためシーズン最終戦まで進出チームが確定しないケースも珍しくありません。今年のアメリカンリーグでも、レッドソックスが東地区3位でしたが、西地区2位のアストロズを勝ち数で上回り、ポストシーズン進出を果たしました。


ポストシーズンは、最初のワイルドカードシリーズが3試合制(2勝先勝)、次のディビジョンシリーズが5試合制(3勝先勝)、その後のリーグチャンピオンシップシリーズが7試合制(4勝先勝)、最後のワールドシリーズも7試合制(4勝先勝)です。例えばドジャースはナショナルリーグ西地区1位でしたが、他の2地区の優勝チームの勝ち数が上回ったことから、ワイルドカードから勝ち上がる必要があります。そのため、9月30日から11月1日までの約1か月間に、13~22試合を戦う可能性があります。

9月28日シーズン終了時のプレーオフシード状況©MLB
9月28日シーズン終了時のプレーオフシード状況©MLB


野球場は “Ballpark”? “Baseball field” じゃないの?


実は、MLBの球場は Ballpark(ボールパーク) と呼びます。一方で、地域や学校のグラウンドなどは Baseball field と言うのが一般的。 MLBの球場は試合以外にも家族が楽しめるような、バッティングセンターなどのエンターテインメントを取り入れることを目的としているため、「ボールパーク」と呼んでいます。


ちなみに、英語で“ballpark figure”という表現、聞いたことあると思いますが、これは「ざっくりとした数字」の意味で、「メディアが“今日の観客数は、ざっとX万人”と見積もった」ことから来ているそうです。ビジネスでもよく使われるフレーズです!


■ 日本の野球用語と違う・カタカナとも違うMLBの英語!


まず、「得点」はポイントでもスコアでもなく、 run(ラン) と表現します。 これを使って、投手の防御率は ERA (Earned Run Average). 直訳すると「相手に稼がれた点数ER-earned runの平均」です。つまり、投手が9回投げて何点取られたかを示す指標です。完投は、complete game, 完封shut-outです。


打点は RBI (Runs Batted In)、直訳すれば、「自ら打ったヒットで迎え入れた点数」です。たとえば “RBI double”は、「タイムリーツーベースヒット」を意味します! 


Pitch Clock (ピッチクロック) は、試合時間の短縮のため2023年シーズンから導入されました。投手がボールを受け取ってから投球動作を開始するまでに許された秒数を時計が示します。ランナーがいないときは15秒、いるときは18秒です。また、打者と打者の間は30秒です。この時間をオーバーするとワンボールが打者に与えられます。関連して、牽制球(pickoff attempt)のために投手がプレートを外せるのは2回までで、3回目はボーク (balk – 発音は[ba:lk]) と判定されます。


大谷さんが、ホームゲーム先発で1番打者の場合、1回の表を投げ終えた後、一番打者(lead-off hitter)の打席に、2分15秒以内に入らないといけませんが、7月のゲームでは、審判の判断で、特別に長い時間を待ってあげたようですね。ヘルメット、エルボーガード、シンガード(shinguard、すね当て)、バッティンググラブ、ヘルメットなどの装着は2分15秒では無理ですよね。今後も大谷さんの二刀流で、MLBのルールがどんどん改正されそうです。今論議が起きているのは、DH―designated hitter(指名打者)がリリーフ投手になると、その後DHに戻れないというルール。現行ルールのままでは大谷さんが7回や8回に中継ぎ(set-upper)に回ると、8回裏、9回裏のチャンスに打席に戻れなくなりますからね。


サヨナラヒットは和製英語=正しくは“Walk-off”


最終回裏に試合を決める劇的「さよならヒット」は、英語で walk-off(ウォークオフ) と表現します。

  • サヨナラヒット:walk-off single

  • サヨナラホームラン:walk-off blast

  • サヨナラ満塁弾:walk-off grand slam


時々TV中継で、大谷さんがフェンスギリギリに超えそうな一発を打った瞬間、実況アナウンサーが ”Going! Going! gone! Sayonara, Otani-san!” と叫ぶことがありますが、これは日本語の「サヨナラ本塁打」の意味ではなく、フェンスを越えるホームランの弾道に対して、「入るか、入るか、入った、サヨナラ!」と、ボールにさよならという意味ですので、誤解なきよう。


他の和製英語にもご注意!


日本のプロ野球でよく使われている言葉の中には、英語圏では通じないものも。以下がその代表例です。

フォアボール = walk

ランニングホームラン = inside-the-park home run

タイムリーツーベースヒット = RBI double

ライナー = line drive

ネクストバッターズサークル = on-deck circle

 

投手が投げる球種は、ストレート = fast ball、変化球の総称はbreaking ballですが、カーブ(curve ball)、スライダー(slider)、スプリット(splitter)、チェンジアップ(changeup)などは英語そのままです。

 

■WHIP, OPSて何?


昔の野球では、選手の力を評価する指標は、打者は、打率(Batting Average)、打点(RBI)、本塁打(HR)、投手は勝敗(W/L)、防御率(ERA)で評価していたのですが、最近はチームへの貢献度や、試合を決める要因などをより反映した能力を以下2つの数字で評価します。


WHIPWalks plus Hits per Inning Pitched)

投手の評価指標で、1イニングあたり、何人の走者を出したかを示す指標です。WHIP = (与四球+被安打)÷投球回数。数字が小さいほど良く、1.00以下がエース級の投手です。 ドジャースの山本由伸投手のWHIPは0.99、ERA2.49です。


OPS On-base Plus Slugging)

打者の評価指標で、出塁率(OBP)と長打率(SLG)を足した数値です。数字が高いほど良く、0.900以上が大変優秀、大谷さんは、ヒットの中でも2塁打、3塁打、本塁打数が圧倒的に多いので、OPSは1.0を超えてMLBで2位です。1位はヤンキースのアーロン・ジャッジです。


■実況中継で英語のリズムのトレーニング! 


通訳者の皆さんへ、昔、私がこっそり実践していた学習法の一つがMLB中継の実況アナウンサーの真似をすること!


このブログで、何度もリズムが大事と力説してきましたが、MLBのブロードキャスターたちの実況って、実はすごく英語のリズムや抑揚の勉強になるんです。野茂投手がMLBで投げていた時代に、ロサンゼルスに住んでいた私は、ドジャースの大ファンで、球団の中継ブロードキャスターであるVin Scullyさん(ビン・スカリー、86歳まで中継を務めた有名人)の独特な口調とリズムを真似していました。


特に形容詞や副詞をグ〜ンと伸ばして感情豊かに話すあのスタイル、真似しているうちに自然と流れるような英語が身についていきました。


以下のリンクは、2024年に大谷翔平選手がMLB初の「50本塁打50盗塁」の偉を業達成した瞬間の英語実況です。真似してみませんか!この実況は、正にアーティスティックでした!


この実況を文字起こしした英語とその訳は、以下です(達成の瞬間は動画の3:00からご覧ください):


"Otani sends one in the air the other way(*), back it goes… gone! One of a kind player, one of a kind season, Shohei Otani starts a 50/50 club!"


「大谷が逆方向に打ち上げた!打球は後方へどんどん伸びる、入る、入る、入った~!唯一無二の選手、唯一無二のシーズン、大谷翔平はついに50/50クラブを作ってしまった!」)*”the other way”とは、左打者の逆方向であるレフトスタンドへ入れたという意味です。


アナウンサーの熱量と英語の自然な流れが見事に融合した瞬間。英語を学びたい人にとっても、こういう“ライブの英語”こそが一番の教材になるんじゃないかと思います。


英語は“机の上”だけじゃなく、“耳と口”でも覚える時代。もしMLBファンなら、実況を真似してみるのもアリかも!あなたの中の「実況魂」、目覚めてみませんか?


それでは、See you at the ballpark!



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2件のコメント


ゲスト
6時間前

NLディビジョンシリーズ第2戦9回裏4対3に迫られたドジャースが同点ランナーを刺すために講じた守備プレー"Wheel Play"(ホイールプレイ)とはー――無死または一死二塁で送りバンド(sacrifice bunt)の可能性が高い時、二塁ランナーを刺すためのプレーです。Wheelは内野手が守備位置を車輪の様に回すことによります。投球モーション開始と同時に一塁手と三塁手が前進し、ショートは三塁に走り、二塁手は一塁をカバー、バントを捕球後三塁で走者をダッチアウトするプレーです。二塁ががら空きになるため、ヒッティングに変えられるとセンターへヒットされ得点されるリスクもあります。今回はサードのマンシーとショートのベッツが素晴らしいプレーで三塁アウトでピンチを逃れました。

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エディ先生
9月30日

読者の方から「さよならを何故walk-offというのですか?」という質問をいただきました。これは、walk-off the field(球場を去る)という意味で、逆転の瞬間に負けたチームも勝ったチームも球場から立ち去るからです。日本語の「さよなら」は、観客やチームにさよならというイメージですが、どちらもゲーム終了を意味する2つの違った表現ですね。他にもご質問があれば、どんどんコメントしてください。

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