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【アメリカの戸建て住宅事情】第1回 中古住宅と新築住宅の違い

更新日:6月23日


今回からは少し趣向を変えて、「アメリカの戸建て住宅事情」と題して、私自身の購入・居住体験をもとに、アメリカの戸建て住宅の購入から売却、新築施工などについて複数回のシリーズで解説していきたいと思います。各専門用語には、( )内に英語表現も添えていますので、建築に興味のある方、留学・移住を考えている方にも参考になるかと思います。

↑テキサス州ケイティの中古物件4ベッドルーム
↑テキサス州ケイティの中古物件4ベッドルーム

私は1978年から20年間をカリフォルニアで、1998年から16年間を日本で、そしてその後の11年間をテキサスで過ごしてきました。その間に購入・売却した住宅は、昨年から今年にかけて家を新築するまではすべて中古住宅でした。



日本は新築志向、アメリカは中古主流


日本では「家を買う」といえば、人生で一度きりの最大の買い物。そのため、多くの方が新築住宅を購入したり、自分好みに設計・施工(design and build)されるケースが多いと思います。実際、日本では住宅購入の80%以上が新築です。


一方でアメリカでは、約75%が中古住宅の購入。これにはいくつかの理由があります。

まず言葉の違いから見てみましょう。


中古車は "used car" と言いますが、住宅になると "used house" とは言わず、"existing home"(既存住宅)と呼ばれるのが一般的です。つまり、アメリカでは中古住宅がごく当たり前の選択肢であり、「車のように減価償却するもの」ではなく、再利用可能な価値のある資産として認識されています。



中古の価値が高いから、リフォームが文化として定着


アメリカでは、一度建てられた家が数十年からともすれば、100年超えても木造の戸建てを改装している場合があるんです。こうして家は何度もリフォーム(remodel)されながら住み継がれていきます。日本ではどんな家でも30年で戸建ての家の建物の価値はゼロになりますが、アメリカでは、何年たってもきれいにリフォームしていて、機器、システム、塗装などに故障がなければ、新築とあまり変わらない価値で売買されます。


リフォームの対象は、内装や外装のペンキ、壁紙交換、床材の貼り替え、キッチンやバスルームの再設計、などで、これに加えて寿命がきた配管、システム、機器などの交換も常に行います。(機器システムの故障はHome Warrantyという保険がカバーしますが、これば別の機会に仕組みを説明します。)


ちなみに、日本でよく使う「リフォーム(reform)」とは、和製英語で、英語では、実は制度や仕組みを改善するという意味。 住宅の改装という意味では通じませんのでご注意を“remodel”が正しい英語です。バスルームやキッチンのリモデルは、寿命ではなく、使い勝手や見栄えで改装しますが、設備機器などは故障で更新(replace)します。


また、アメリカでは電気工事(electrical work)、空調や建て増し、プールの設置などライセンスが必要な工事以外は、Handyman(便利屋さん)と呼ばれる格安の業者が多数存在し、比較的安価にリフォーム(remodel)を行うことができます。見積もりを複数とって、DIY感覚でリフォーム(remodel)を楽しむ人も多いのです。


それでは、実際に写真で、新築の内装と、リモデルした中古の内装を比較してみましょう。


現在テキサス州のケイティ(Katy)という街で売りに出ている、新築と築36年の中古物件です。ほぼ同じ地区にあり、広さが違うので売値も違いますが、1平方フィート当たりの価格ではほぼ同額です。差は?というと、外観とキッチンのデザイン(最近はオープンキッチンが流行)以外内装はどちらもあまり変わらないぐらい、中古物件にも美しいリモデルが施されています。


▼(新築物件)4ベッドルーム $535,990 1平方フィート当たり$195


▼(中古物件)4ベッドルーム、$625,000 築36年 1平方フィート当たり$186



なぜアメリカでは中古住宅の需要が高いのか?


この背景には、日米間での住宅ローンに関する税制の違いが大きく関係しています。



日本の住宅ローン減税(控除)は制限付き


日本では、毎年の住宅ローン残高の0.7%までが新築で最大13年間(中古は最大10年間)所得控除される、ただし年収2000万円未満という制限付きとなっています。30年ローンの場合、控除期間は最大の13年でも半分以下に留まります。



アメリカでは住宅ローン控除が広範囲


一方アメリカでは、住宅ローン金利の全額が所得税の控除対象になります。しかも収入制限も金利制限もなし。たとえば現在のローン金利は6~7%と高めですが、控除を適用すると実質的な負担は賃貸の家賃とあまり変わらないのです。


そのため、頭金さえ準備できれば、20代後半~30代前半でマイホームを購入するのが資産形成の第一歩とされています。



アメリカ式ライフステージと住み替え文化


このような背景から、多くのアメリカ人は次のようなステップで住宅を購入・住み替えていきます。


1. 最初は小さな中古住宅(2ベッドルーム)を購入

2. 5年程度のスパンで収入や家族の増加に応じて買い替え(3~4ベッドルーム)

3. 子供が独立すると、家をダウンサイジング(downsize)して、最終的に夫婦2人で小さな家、またはコンドミニアムやタウンハウスへ移り住む


この「子供が巣立ったあとの家の状態」を、アメリカでもempty-nest(空っぽの巣)と呼びます。とても象徴的な表現ですね。


こうしたライフサイクルの違いがアメリカで中古住宅の需要が高い要因でしょう。


次回は、アメリカのHOA(Home Owners’ Association)住宅所有者協会)について解説します。



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2件のコメント


UraKen
6月08日

生活感のあふれた解説で、アメリカの住宅事情がよくわかりました。

日本人は土地に対する執着が強いといわれますが、アメリカ人はいかがですか?

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エディ先生
6月08日
返信先

コメントありがとうございます。アメリカも田舎では、海外どころか、その町から出たことがない人も多く、特に南部の田舎では、生まれ育った小さな町にずっと住み続ける人は多いですね。一方大都市の若い人たちは、このブログの通り、家の転売をしながら人生設計をするので、生まれた土地にはこだわらないようです。在米の日本人カップルの方々は、永住権のままの方が多く、おっしゃる通り、生まれた土地への執着が結構強く、老齢になったら日本に帰ろうと思っている方も多いようです。

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