カラオケのハモりで同時通訳トレーニング?
- エディ先生

- 2025年11月28日
- 読了時間: 6分

以前のブログ(2025年6月27日「『同時通訳なんてムリ!』と思っているあなたへ――脳の筋トレで変わる!」)でご紹介した「ラギング(単語飛ばし)」の同時通訳技術のトレーニングに続いて、今回は、もう一つのトレーニング方法、これは、おそらくまだ誰も提唱していない方法をご提案します。
この方法は、私自身が、ジョギング中などに時々実行しているトレーニングです。誰にでも効き目があるかどうかは、まだ検証ができていませんが、通訳学校の先生が推奨する「シャドーイング」や「サイトトランスレーション」に比べると、もっと楽しく鍛えられる方法です!
その方法とは、なんと、「カラオケのハモり」です!
皆さんの、「はぁっ?」ってリアクションが見えます!
まず、同時通訳に必要な脳内の行動を整理します。
同時通訳は、脳内の複数の部分を並行して稼働させる高度な「並列認知行動」(マルチタスキング)で、大きく以下の3つのプロセスが常に同時進行しています。つまり、特別な訓練を受けないと習得できない技術です。
1. 入力処理(インプットー聴覚理解)音声として入ってくる言語#1を聞き取り、意味を理解する。
2. 意味転換(コンバージョンー言語間変換)理解した意味を、言語#2の構文・語彙に即時変換する
3. 出力制御(アウトプットー訳出)同時に言語#2で文脈的に自然な訳出をする。
同時通訳と「ハモリ」との共通点
そもそも、私が同時通訳から「ハモリ」を連想した最初のひらめきは、どちらも練習しているときに、「頭の中がかゆくなる」感覚があった事で、「これは、複数の機能が脳内で交差しながら走っているからかも」と感じました。そこから、「この2つスキルは類似した能力ではないだろうか」という仮説を立てました。つまり、カラオケの「ハモリ」も、同時通訳と極めて似た並列認知能力ではないかと考えたのです。
カラオケで主旋律と「ハモる」スキルは、
主旋律の音を正確に聴き取り続ける(インプット)
主旋律に合わせて同時に自分のハモりの音を主旋律に共鳴する和音の音程でコントロールする(アウトプット)
しかも、両者の音が「不協和音になってはいけない」=アウトプットしながらもリアルタイムで聴覚のモニタリングを続ける
すなわち、ハモりとは、「耳と口を脳の別の部分で制御する行動」で、同時通訳における「聞きながら訳す処理分離」と類似しているのではないかと考えられます。この仮説が一理あると思われる方は、ぜひ一度ハモリの練習をしてみてください。
あっ、カラオケボックスに行く必要はないですよ。カラオケ練習動画へのリンクを以下に掲載しておきますので、お試しください。男女の音域は3度ぐらい違いますので、男性用と女性用をそれぞれ挙げておきます。
1) まず、聞いた音の3度上と下の感覚をつかむ練習です。出された音を聞きながら3度上、下の音程を反復練習して、和音が共鳴することに慣れてください。
2) 次に実際の曲を歌ってハモリ練習をします。それぞれの動画に、主旋律とハモリ、主旋律のみ、ハモリパートのみと別れて歌うようになっています。
注)若い通訳さん、練習曲が古くてすみません、もっと若者の曲も探せば出てきますので、ご自分で好きなハモリ曲をお探しくださいね。
(スタート~ 上下旋律、2:40~ 上のパートのみ、4:12~ 下のパートのみ)
大事なのは、ハモる時に、主旋律を聞く「聴覚」に集中して脳の80%を使ってください。(6/27のブログでラギング練習の時に説明した通りです。)
もっと違う曲で練習したい場合は、YouTubeで「曲名+カラオケハモリ」と検索すると、色々な曲が出てきます。練習する時は、主旋律、ハモリパートが別に視聴できるもの、または両方の音も聞けるものを選ぶと効果的に練習ができます。
なぜ、ハモリが同時通訳に効果があるか?
「ハモリが同時通訳に効果ありそうだ」と言っても、裏付けに乏しいので、ハモリがなぜ可能なのかを調べてみると、以下のように同時通訳との共通項がいくつかあることがわかります。
1. 並列処理(マルチタスキング)
ハモリの際、あなたの脳は次のような2つの処理を同時に走らせています。
入力処理:主旋律の音程・リズム・強弱を聴覚的に分析し続ける
出力処理:聴こえている音に対して和音で共鳴する音を即興的に生成し発声する
つまり、「聴く」と「発声する」が同じ音のチャンネルで干渉しないように脳が分業化しているのです。これは同時通訳で「聞きながら訳す」ときと構造的にほぼ同じ負荷のパターンです。
2. 干渉の抑制
主旋律の音を聴きながら、自分の出す音がそれに引きずられない。人間の脳は本来、自分が出した音を優先的に処理する性質がありますが、ハモリでは、主旋律の音を聴き取り続けなければなりません。そのため、脳は次の2つの抑制機能を使います:
自分の声の音像を部分的に“キャンセル”して、主旋律を明瞭に聞き続ける。
主旋律からの刺激に引きずられず、同時進行する自分のパートの出力を切り分ける。
これにより、他人の音を聴きながら自分の声を制御する「干渉耐性」が鍛えられます。これは、同時通訳で「話し手の声を聞きながら自分の声で訳を出す」時の最大の難所と一致します。
3. 聴覚と運動の「結合」ではなく「分離」を学ぶ
ハモリは、聴いた音と異なる音を出して、しかも和音で美しく響かせなければならない、つまり、脳は「聴覚入力」と「運動出力」を部分的に切り離して再連携する必要があります。
これにより強化されるのが、マルチタスク統合、注意配分とモニタリング、タイミング制御と誤差補正などの能力です。これらはすべて、同時通訳で求められる「聴きながら、訳出を少しだけ遅らせる」神経経路と共通していますよね。
4. ハモりにおける次の音を予測する力と同時通訳における文末を予測する力の共通性
ハモリでは、主旋律がどの音に進むかを先読みし、その瞬間に共鳴する音程を当てにいきます。日→英の同時通訳では、異なる語順にも関わらず、発言の前半部分の内容から、語尾の結論の動詞と時制を先読みして、訳出を開始することが可能です。この「先読み・予測・調整」のサイクルも二つの能力の共通点ではないかと考えられ、ハモりの練習で、予測能力も鍛えられるかもしれません。
ハモリ練習が同時通訳に効くという仮説が正しい理由
入力と出力を同時制御する「マルチタスキング」能力を強化する。
自分の声と他者の声の干渉を抑える「聴覚抑制制御」を鍛える。
聴覚入力と運動出力を分離しつつ再統合する神経ネットワークを訓練する。
先読み・タイミング・誤差補正の能力を高める。
結果として、同時通訳に不可欠な「耳と口を別回路で動かす脳」が育ちます。
ハモリが同時通訳に少しでも効果があれば、カラオケと同時通訳の両方が上達する一石二鳥で、カラオケに行っても、あなたのハモリの腕前を発揮できますよね!さらに、通訳者として、Endless LoveやA Whole New worldなどの英語のデュエットができるとCoolですよ!
by エディ先生
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とてもユニークなレッスンを紹介していただき、ありがとうございます。
第一歩が踏み出しやすくなりました。